デビッド・ロブソン著(土方奈美訳)「なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか」読了。
賢い官僚や企業の役員は賢いのに愚かな判断を下すのか疑問に思っている方も多いはずで、読んでみるとわかりやすく理由・原因が書かれており、ひじょうに面白い内容であった。
天才はなぜエセ科学を信じるのか
例えば地球温暖化については二酸化炭素排出が原因であることは科学的コンセンサスであり、政治的にリベラルな人のうち、計算能力が高く、基本的な科学的知識がある人をそれを受け入れる傾向が強いとのこと。
一方、科学的知識が豊富で数字に強い人ほど、科学的コンセンサスを否定し、気候変動に関する言説は誇張されすぎている、と考える傾向があるそうだ。
以前TVによく出ており、最近はYouTuberとして活躍されている某大学のT教授が典型的な例だろう。
成人の判断力
被験者は25歳から75歳までで、アメリカでは知恵は年齢とともに着実に高まっていき、人生で多くの経験を積むと、よりオープンマインドになるという研究成果があり、同じ検証を日本で行ったところ、非常に面白い結果となったとのこと。
日本人は25歳までに、アメリカ人が何十年も人生経験を積まなければ身につけることのできないような人生の教訓を学んでいるとのこと。具体的には「第三者の視点で考えること」の重要性を強調しているそうである。
全体論的で相互依存的な世界観が存在することを示唆しており、我々日本人は物事の背景に注意を払い、誰かの行動の原因を幅広く捉える傾向があるそうだ。外国人から観ると、その様に思われるが、個の意見よりも全体を観て行動をする自己犠牲をするところが欧米諸国・アジア諸国との違いなのではないだろうか。
天才ばかりのチームは生産性が下がる
スポーツだけでなく、ビジネスの世界でも優秀な人材をかき集め、全体の70%以上を超えるとエゴのぶつかり合いによってパフォーマンスは一気に低下するとのこと。確かに、日本のプロ野球でもかつて某球団が各チームから4番打者をかき集めていたが、結果として優勝すら出来なかった。
バカは野火のように広がる
2007年には携帯の世界シェア50%を誇っていたノキアはiPhoneが発売されてからシェアは減少させ、最終的に2013年にマイクロソフトに買収されてしまったが、iPhone発売されてからもノキア内では時期の開発を行っていたが、経営陣はすぐに新製品を発表したがったが、開発側は何のもの期間を要するのに発売優先に多くのプロジェクトを大急ぎで終わらせていたとのこと。
現場の人間は上司に反論しようとするならば、「ネガティブなことを言い過ぎるのは、自分から処刑台に上がるようなものだ」と中間管理職は語っていたとのこと。
もう一つの例として、トヨタ・プリウスがUSでアクセルペダルが動かなくなり、土手に突っ込み炎上する事故が発生。事故が発生する前から2000件以上の故障報告があがっていたが、経営陣は会社全体の目標に集中することを妨げるような悪いニュースを聞くまいとしていたとのこと。
以前、自分がうつになる前も似たような経験をしているので、数字を管理職に物を言えない風土は会社を衰退させる原因にも繋がっているのが実感出来る。
どこの国でも似たようなことは起きているが、一番良く見える自国では、上にものが言えない・言わせない、反対意見やネガティブを言う人間は現場から外されるというケースを今までに何度も観てきているが、このような状況は戦前からもあり、「失敗の本質」を見極めない以上何も改善されない。
なのに頭の良い人間の多い、省庁や大企業では以前改善されていないため、経済は衰退し、GDPどころか以前半導体のシェアトップ10には日本企業が総なめしていたが、今は跡形もなくなっているのが良い例であろう。
若い人にはもっとものが言える環境と、ネガティブでも建設的に話を聞ける上司の育成が今後日本の発展の要になるかと思われる。
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