江利川春雄著の「英語と日本軍 知られざる外国語教育史」読了
旧日本軍の外国語の取組と戦略の変遷について知ることができたが、太平洋戦争時中は敵国語の使用を禁止という認識であったが、海軍では太平洋戦争真っ只中の中でも英語教育を行っていたということ、文部省は太平洋戦争下でも国民学校高等科を含む中等学校以上で英語教育を継続していたとのことを初めて知った。これはメディアによるプロパガンダが要因だった模様。

幕末は西洋の植民地化を如何に防ぎ、独立国とし近代国家建設のために外国語を学ぶために切磋琢磨し、語学の授業のみならず他の分野も一切日本語抜きで外国語で学び、軍隊の近代化に成功させ、日清・日露戦争に勝ち抜いたが、その後陸海軍共に制度的問題と教育戦略に欠如し、それが太平洋戦争の敗戦に導いたと言っても過言ではないと思われた。
戦後の社会も語学戦略に精彩を欠き、一時は日出ずる国となったが、バブル経済後はズルズルの近隣諸国に追い抜かれ、技術立国も今は昔の話となっているのはまさに語学に関する認識が低く、戦前の失敗を学び切れていない証拠ではないかと思われる。
一方、戦時下のアメリカは敵国日本の言語・文化を学ぶ組織が構築され、日本人の動向や戦後占領下の支配を如何に進めるかまで研究されていたのは、孫氏の「彼を知り己を知れば百戦殆からず」を実践していて、その言葉通りの結果を治めたのは必然であったかと。
当書籍で一番印象的だったのは、1941年(昭和16年)度に陸軍は予科士官学校などの入試から英語を除外したが、海軍では井上成美兵学校校長が「外国語一つもできないような者は海軍士官には要らない」という方針により最後まで英語教育を続けたとのこと。

戦後の平和な時代を迎えられるようになったが、英語は受験だけでなくビジネスをする上で必須なアイテムとなっている。ネットが普及し、ビジネスに国境が亡くなってきている今、語学は昔の「読み書き算盤」と同様の常識となり、英語ができないとオワコンとなり、太平洋戦争以上に悲惨な結果を生み出す時代になっていることを認識しなければならない!と思い、中三になった息子にも当書籍を読んでもらうことにした。
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